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2007.04.21

好曲[guitar]☆「崩壊の前日(Live)」角松敏生 feat. 浅野"Butcher"祥之

終日仕事と家の用事に追われ、ようやく一息ついて深夜ネットを徘徊し始めた矢先・・・思いもよらない悲しい報せを目にし、一向に動揺収まらず朝を迎えてしまった。

その人の存在を初めて認識したのは昔TBSが深夜に放送していた音楽番組に杏里が出演した時のこと(ベータのビデオに録って保存してあるはず)。その際のバックバンドによるカッコいい演奏で、久保田利伸BANDも兼ねるファンキーで骨太なGrooveが魅力の中村キタローさん(Bass)と共に、歯切れのいいカッティングと伸びやかなソロが実に魅力的なギタリスト氏のプレイにすっかり耳を奪われてしまった。それが“ブッチャー浅野”こと浅野祥之という素晴らしいプレイヤーとの実質的な出逢いだった。角松敏生プロデュース時代の杏里を支えるバックバンドのレギュラーだった浅野さんが、その後しばらくして角松BANDのギタリストに迎えられたのはまったくもって自然の流れで、思うに(梶原順さんと共に)頼もしい相棒を迎えたこの辺りから角松サウンドにおけるギターサウンドの比重が加速度的に増していったと思う。並行して浅野さんが活動していたインストグループ“空と海と風と...”におけるハチロク系名バラード「サンタが泣いた日」は角松が歌詞をつけて自身のアルバムに収めたし(ここでの浅野さんのGt.ソロも素晴らしい)角松プロデュースによる今井優子/米光美保といった女性アーティストのアルバムにも浅野さんはギター参加のみならず楽曲提供まで行なっていた。そんな浅野さんが奏でるギターフレーズは、まさに唄うように雄弁で艶やかで、それでいて枯れたタッチから熱くエネルギッシュなものまで変幻自在だ。しかも曲調やコード進行を最大限に活かすそのセンスは、セッションマンとして、というかミュージシャンとして数多くの音楽に触れ、愛情を注いできたのだとすぐわかる。自分が好きになるギタリストの多くは、繊細なニュアンスのチョーキングで聴く者を魅了し、かつシングルノートやカッティングでのバッキングに職人的センスを発揮する人であり、浅野さんはまさにそういうタイプ。そして、売れっ子セッションマンでありながら、丁度全盛期のバジー・フェイトンにも通ずるロック/ソウル双方のスピリットが常に色濃く感じられ、間違いなく不動の贔屓ギタリスト上位に位置する(アコースティックギターでのプレイ&アンサンブルも最高で梶原さんと組む“JとB”はDEPAPEPE誕生の原点にもなったそうだ)。そんな彼の真骨頂は、やはりライヴでのプレイ。オーディエンスの前で黙々と、しかし熱いフレーズを弾くどっしりとした姿は観る者にも、そして隣で唄う角松にも、いつだって頼もしく映っていた。だから、角松のLive映像作品には、浅野さんの印象的なシーンが多い。去年6月に横浜アリーナで行なわれた角松25周年記念6時間LiveのDVDはもちろんだけど、それ以上に今や入手困難な“TOSHIKI KADOMATSU 1993・1・27 FINAL CONCERT TOUR あるがままに”・・・いわゆる凍結ライヴで画面とギタープレイから伝わってくる彼のハートには激しく揺さぶられるものがあった。あの日、アンコール以降の武道館の空気はライヴハウスのそれであったし、客席で感じた想いは映像でも十分伝わってくる。「時の挽歌」のエンディングにおけるギター・ソロの掛け合いは角松との“会話”をいつまでも楽しんでいたいようだったし「あるがままに」でのギター・ソロは活動凍結前のベストに挙げたい万感の想いが込められたスバラシイものだった。エンディングでは自らマイクでコーラスを重ね、最後はじっとうつむいたまま.....。挿入された打ち上げでの1シーンも含め、間違いなく作品中のハイライトに数えられていい。

そんな浅野さんが昨晩4月20日夜、僅か48歳の若さで急逝されたと知った瞬間から、何も手につかなくなった。角松BANDのリーダーで日本最高のベーシスト青木智仁さんが亡くなられた10ヵ月前とまったく同じような状況。どうして人間的にも音楽的にも素晴らしい方々が足早に相次いで天に召されるのだろうか。角松の胸中を思うと、なおさらである。長く輝かしい浅野さんのキャリアにおいてCDに遺されたプレイはソロもバッキングも曲に欠かせない素晴らしい演奏ばかりだけど、その中で自分がNo.1に挙げたい彼のGuitar Soloに触れようと常々考えていたので、今更ながら、いや今だからこそ書き留めておきたい。それが・・・・・・角松活動解凍後の復帰第1作『TIME TUNNEL』('99)発売に伴い行なわれたツアーのライヴ音源とインスト曲で構成された2枚組アルバム『voices under the water / in the hall』('99)収録の「崩壊の前日」。阪神淡路大震災での悲劇に想いを寄せたこのバラードのスタジオテイクではラリー・カールトンによる円熟したギター・ソロを聴く事ができる一方、本ライヴテイクには、ステージだからこそ聴ける浅野さんの渾身のプレイが収められている。率直な印象として、角松の歌も全体の演奏もこちらの方が遥かに深く胸に響く。特に、一旦曲が終わり、再度カーテンコールの如く演奏されるエンディングにおいては、浅野さんの心の叫びのごときチョーキングから迫りくる熱さに、何とも言えない気持ちになる。こんな想いにかられるギター・ソロには滅多に出逢えない。そして、もうこんなプレイを生で目にすることはできないという現実。悲しくて、でも信じられなくて、全くまとまりのない文章になってしまう。それでも自分は、この2枚組ライヴCD(Disc-2最後に収められたシークレットトラック「もう一度 and Then」は8cmシングル同様本来のBANDアレンジ!による名演であり、エンディングで“あのフレーズ”も含む浅野さんの熱烈Gt.ソロが存分に聴けるだけに尚更貴重な作品だ)とライヴ映像作品に浅野さんの素晴らしい演奏を収めてきてくれた角松やシング・ライク・トーキングに感謝しつつ、記録するに値するかけがえのない音楽の遺産をいつまでも大切にしていきたい。合掌。

#ちなみに4/20は浅野さんが永井“ホトケ”隆さん(Gt.)沼澤尚さん(Ds.)と結成したブルースバンド“BLUES POWER”の記念すべき1stアルバム発売日......なんと悲しき偶然なんだろうか。



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コメント

<たぁ>さん
ブッチャー氏が亡くなったの知りませんでした。ショックです。
ご一緒した2004クロスオーバージャパンの時にプレイを見たのが最後となりましたが。
まだ48歳。青木氏と同じでまだまだこれからという人なのに。
ちょっと前ですが、ギタープレーヤーの成毛滋さんが亡くなられて、
やはりショックを受けていたばかりなのに。
それにしても角松は相当辛いのではないでしょうか?
上で紹介されているDVDでも購入しようかと思います。

投稿: kuro | 2007.04.21 06:29

☆ kuroさん
正直まだ信じられません。というか、認めたくないというか。
永井さん/沼澤さんと結成したBLUES POWERの1stが
ちょうど昨日発売されたそうなんです。
成毛さんに続いて日本のギター界にとっても大きな損失ですね。
しかし、遺されたミュージシャンとリスナーが
音楽を愛した彼の遺志を継いでいかなくちゃいけないと
改めて思います。一層音楽を大切にしていきましょう。

投稿: <たぁ> | 2007.04.21 22:35

最近は年のせいもあるのでしょうか(苦笑)
アマチュアミュージシャンながら
本当に気の合った仲間と気の合った音楽が出来る喜び
というようなものを実感していますが
その中の大事な人を失う悲しみは想像に余りあります。
微力ではありますが、せめて残してくれた偉大な
功績をリスペクトして受け継いでいきたいと思います。
都知事が偉大なる弟のことを
”人気者は早世することで人生の帳尻が合っている”
ような発言をしていましたが
濃密な分だけ短くなるのでしょうか。。。
せめて色々な思いを抱いて
我々も自分の志す音楽を深めていきたいと思います。

投稿: ロマンキッカー | 2007.04.23 08:58

☆ ロマンキッカーさん
昨日「サンタが泣いた日」のギターを聴き直して
かなり涙腺刺激されてしまいました。
ブッチャー浅野さんの弾くギターって
センスもよくてカッコいいだけではなく
人柄の良さみたいなものが滲みでてましたね。
とてもハートの熱い人だと感じさせてくれます。
そういうのって、音に出るんだなぁと。
彼は音楽と仲間をすごく愛してたように思いますし
そんな彼だからみんなも心から慕ってたんじゃないかって
遺された音源を聴きながら改めて実感します。
魂のこもった彼のプレイを振り返りながら
我々ももっと音楽を好きになっていきたいですし
その楽しさを多くの人たちと分かち合っていければ。

投稿: <たぁ> | 2007.04.23 21:59

★手持ちのものから探して聞いてみました。
prayer1 ISLAND(神保/桜井/塩谷/数原/浅野/鈴木英/山田/角松)
prayer2 DISTANT RAIN(友成/小林信/浅野/山田)
prayer3 YA-DA(米光/浅野/山田/角松)〜
Feel of You(米光/小林信/村上秀/青木/浅野/角松)
prayer4 BRAZILIAN RHYME(塩谷/沼澤/松原秀/浅野/大儀見/山本/
石川/Lyrico)
prayer5 Morning Bell〜光〜ブルー〜夕日になりたい〜花火
     (浅野/土肥/春名/山口/鈴木英/嶋村/角松)
prayer6 輪になっておどろう!!!(角松/浅野/梶原)

投稿: onward | 2007.05.03 02:36

☆ onwardさん
ごぶさたです。連休はいかがお過ごしですか?
浅野さんの訃報から、あっという間に半月が過ぎてしまいました。
遺されたプレイや作曲の数々に改めて耳を傾けると
“曲の魅力”を最大限に理解して取組む方だったんだなぁと
実感させられますね。それにプレイ/ジャンルの幅が広いし。
友成さんのソロ『NATURAL SIGN』は自分も好きなアルバムです。
ちなみに今週土曜21:00〜21:30のTOKYO FM
角松レギュラー番組は、浅野さん追悼の内容とか(合掌)。

久々ロマンキッカーさんと企画進行中です。
公開間近ゆえ、ご案内致したく。よかったらメールで連絡くださいネ。

投稿: <たぁ> | 2007.05.03 15:48

はじめまして、我慢できずに反応してしまいました。

崩壊の前日、このエンディングのギターソロ、着うたにして携帯に使ってます。
浅野さんのギターはどんどん進化して、これを遥かに超えるソロは「Blues Power」のライブ会場で沢山目にしました。

でも崩壊の前日のエンディング、こんなに暖かく包んでくれるフレーズ、世界中のあらゆる音源捜しても見つからないでしょうね。
音楽はテクニックなんかじゃない、音楽やってる人に聴いてもらいたいですね。

投稿: REALMUSIC | 2011.05.14 11:06

☆ REAL MUSICさん
コメント頂いてたのに長らく返信し損ねていて申し訳ありませんでした!
浅野さんのここでのGt.ソロは、いつ何回聴いても
ほんとうに聴く者を暖かく包んでくれる、魂のこもったテイクで
大切に聴き続けていきたい珠玉の音源だと思います。
共感していただき、とても嬉しかったです。

投稿: <たぁ> | 2012.12.24 17:13

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